寺山修司、J・A・シーザー『田園に死す』 / SWAX-57

田園に死す

田園に死す

【評価】☆☆☆☆☆(評価不能)

1974年制作の映画『田園に死す』のオリジナルサウンドトラック復刻版。映画は寺山氏の同名歌集を元とした自伝的要素の強い作品とのこと。未見。ただサントラを聞くだけでも十分(かは実際の所分からないが)楽しめた。古典的昭和日本が影を伴って強烈なイメージとして襲いかかってくる。しかし、ある程度のイメージは共感できるものの存分に楽しむには経験が若すぎるかもしれない。結局自らから沸くイメージは映像で見たものに過ぎず、故郷の祭や祖父母の家の臭いを思い起こすのがせいぜいである。足りないイメージを補うためにもぜひ映像を見てみたいものである。


音楽面で。『少女革命ウテナ』でしかJ・A・シーザー氏を知らない者としては其れに通じるものはあるものの、今作の濃厚さには驚かされた。寺山氏の強烈な詩がそのまま、いや、むしろ分かりやすい形にかみ砕かれてぶつけられる。もう、なんというか、たまらん。色んな意味で始終顔が弛みっぱなし。自分の変な笑い声に驚いてみたり。


再び詩について。意図的に「女」を思わせてやまない母のイメージと母殺しのモチーフ。
tr.3「化鳥の詩」、

「母さん、どうか生きかえって、もう一度あたしをにんしんして下さい。あたしはもう、やり直しができないのです。」

「女なんかに生まれるんじゃなかった」「人の母にはなるんじゃなかった。」

tr.6「桜暗黒方丈記」、

死んでくださいお母さん
死んでくださいお母さん

穏やかに始まる短い歌が最後には絶叫。これらを児童合唱団(だけでは無いですが)に歌わせているだけでも業が深いように思う。

性質上、万人に勧められる作品ではありませんが、こういったものが好きであればお勧め。機会があればぜひ。